邂逅(009の日記念)

ある日僕がニューヨークに住んでいるジェットに会いに行った時だった…。
 
「君、ちょっと待ってくれ」
 と声をかけられたので振り向いた。
「僕ですか」
「済まない…。君が余りにも知り合いに似ていたのでつい」
 と古い一枚の写真を見せてきた。そこには日本人女性と共にハーフの赤ん坊の写真であった。一目見て自分の赤ん坊の時の写真だと解った。僕は内心動悸が止まらなかったが冷静を装って、
「可愛いらしい子が写っていますね。お子さんですか」
 と自分の事なのに可愛らしいとは無いもんだと内心苦笑していた。彼は、
「そうなんだ…彼女とは結婚の約束をしていてね…。子供が生まれたと連絡があったきりそのまんま…。僕は息子に会えると喜んだのだけど音沙汰無し、君が彼女に雰囲気が似ているものでつい声をかけてしまいつい…」
「手紙にはお子さんの名前が書いてあったのですか?」
「ジョーと言う名前らしいんだ。叶うならば妻や息子に一目会いたい…。一体何処に居るんだろう」
 と大粒の涙を流す男性。それを見たジョーは、
「有難うございます。母や僕を愛してくれて…。写真の赤ん坊は僕です」
「…」
 男性は僕の顔を見て、
「確かに面影が…、ところで妻は?マサは?」
「母は亡くなりました…。僕が赤ん坊の時に…、だから僕は母の顔を知らないのです」」
「亡くなった?マサが?あぁ何という事だ。まさか死んでいたなんて…」

 僕は父に会えたのが嬉しくて暫く彼とおしゃべりを楽しんだ。
 暫くすると誰かに肩を叩かれた。
 
「おい、ジョー」
「ああジェット丁度いい所に来たね。紹介するよ」
 と彼の方に振り向いたけど其処には誰も居なかった。
「そんな今まですぐそこに居たのに…」
「俺の目にはお前が独り言を言っているようにみえたぞ」
「じゃあ、一体僕は誰と喋っていたんだ…」

 ジョーが誰と喋っていたのかは神のみぞ知る…。
 生者か死者なのかは誰にも解らない。

 最後に、
 ”ジョー、有難う。
 君に会えて良かった。
 元気に暮らしてくれ…。
 今まで傍に居てあげられなくて済まない。
 ずっと見守っている…。”

 と言う思念がジョーの脳裏に聞こえてきた。

終わり

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